「没頭」がそんなに偉いんかいを心理学的に解説
前書き
就活で気づいたのですが、「何かに没頭した事はありますか?」と聞かれます。幸い話す材料はあるのですが、自分の場合は「外発的動機付けだった(=外部からの圧力を受けて)」と思います。そんなに「没頭」がそんなに偉いんかい、と思わなくもないですが、実際に「没頭」がどの程度、人間に影響を与えているのかを調査しました。
心理学論文をまとめた以下の本を読んでこの記事を書きました。
www.kongoshuppan.co.jp
結論
- 自律的動機で行動する事は学習意欲を高める
- 没頭の経験がある人間は、自律的学習と自己決定に長ける
質の高いやる気を構成する三要素
- 行動的側面(熱心に取り組む、努力、試行、専念)
- 感情的側面(情熱を持つ、楽しんでいる、興味)
- 認知的側面(目的を自覚、アプローチの思考)
上記の三要素が一体的にに機能すると、その活動そのものに価値を感じる事ができ、パフォーマンスが向上します。上記をベストの状態として、実際はそんなに上手くはいきません。誰かに指示されて行動したり、あるいは自己のエゴで行動したり様々です。以下でやる気を三つに大別します。
実際のやる気を三分割
実際のやる気を三分割してみます。
- エゴ型やる気
- 賞罰型やる気
- タスク型やる気
エゴ型やる気
エゴ型やる気は自尊心を高めるために自発的行動するタイプです。例えば「他人との比較」「名声の獲得」「自己顕示」などが挙げられます。ただこれは「自分の能力を示す」「自己顕示」に専念してしまい、対象の課題に対しての興味や集中力が低下する傾向にあります。また健康状態も低い傾向にあるらしく、それは理想の目標があまりに高く、そもそも目標達成の実現性が低い事が挙げられます。
詳しくは"完璧主義"のページへ。
またこのタイプで発生する「圧迫感」「緊張」がかえってパフォーマンスを低下させてしまいます。一方で、成功体験から得られる満足感・有能感がパフォーマンスを向上させるという結果もあるようです。
賞罰型やる気
賞罰型やる気はいわゆる外発的動機によって行動する事になります。一見、報酬はやる気を上げると思いがちですが、研究ではそうでないと結論づけられているようです。
「アンダーマイニング現象」・・・「ご褒美を約束する事」が自発的に行動を促進させる意欲を低下させる
これは研究でも実証済みで、報酬を受ける当人が「A. 報酬を期待して行動する場合」・「B. 報酬を期待せずに行動する場合」・「C. 報酬なしに行動する場合」だとAの場合が自由時間における対象行動の割合が最も低かったのです。ただ上記は一概には言えません。エンハンシング現象と呼ばれるそうですが、「言語的報酬( = 褒め言葉)は意欲を向上させる効果が得られるとの結果もあるので、注意が必要です。
ちなみに「報酬を期待して行動する=接近型動機」より「罰を回避する為行動する=回避型動機」方が動機としては強力です。これは以下の記事の価値関数と同様の理論です。ただ回避型動機で発生する「圧迫感」「緊張」がかえってパフォーマンスを低下させます。だからチーム内で「〜しないと〜が起こる」といったネガティブな言葉を発すると、チーム内の作業効率の低下につながるそうです。
melheaven.hatenadiary.jp
新人教育でパフォーマンスを向上させたい時は接近型動機「〜できれば」口調。ブログでアクセス数を稼ぎたいときは回避型口調「〜しないと」口調が良しとされています。
タスク型やる気
タスク型やる気は、対象に対して価値を感じたり、興味を感じたりして、目的に対して努力するタイプです。ここで言う「タスク」を発生させた動機は複数の種類が存在するようです。最も健康的に良いとされているのは、内発的な人生目標に従ったタスク型やる気です。例えば、自己パーソナリティや経験に従って、「成し遂げたい目標」や「自分の関心に対するやる気」が挙げられます。
また成功体験から得られる有能感はさらにやる気とパフォーマンスを向上させると言うデータもあり、上記のような自己選択による目標を達成した時の有能感は「エゴ」や「賞罰」から生み出される目標の達成と比べて大きいそうです。
まとめ
人間が精神的に健康でパフォーマンスを向上させるには
- 「好きこそものの上手なれ」状態を目指すことが良い
- 「好きこそ」の対象は自己決定
- 社会貢献、好奇心などから人生目標を自己決定するとその状態を目指せる