オリックス・バファローズの歴史を歴代タイトル受賞者と共に振り返る【低迷の10年代編】

前書き

前回の続きである。
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今回は2013年以降のオリックスを振り返っていく。

一瞬の黄金期2014年と沢村賞・金子千尋(2013〜2018年)

21世紀のオリックスの黄金期を問われれば、間違いなく「2014年」と答える。この年は奇跡的に怪我人も少なく、最強軍団ソフトバンクと最後まで優勝争いを繰り広げた挙句敗れたが、ファンにとっては最高の1年であった事には変わりはないだろう。金子や佐藤など投手陣の整備に成功した「森脇政権」。一体何が2014年の奇跡を生んだのかを考察していく。まずこれを見て欲しい。

タイトル受賞者

ベストナイン

ゴールデングラブ賞(守備の優れた選手に贈られる)

2013〜2014年

年度 順位 監督
2013 5 森脇 浩司
2014 2 森脇 浩司

目立って活躍しているのはやはり金子千尋である。オリックス球団において打のNo.1がイチローなら、投のNo.1は金子千尋である。金子は前回の記事でも最多勝をとる活躍をしていたが、さらに一皮向け2014年には投手最高の賞「沢村賞」を受賞した。本球団においては唯一の受賞者である。捕手の伊藤光や2013年に日本ハムとのトレードでやってきた糸井嘉男T-岡田、ペーニャ。投手では西、平野、比嘉、馬原、岸田、ディクソン、若手・松葉と東明の活躍もあった。個人的に金子と共に2013〜2014年を象徴する選手だったのは佐藤達也である。最速155kmの速球を武器に2年連続の最優秀中継ぎ賞を受賞。しかし2015年以降チームの順位と共に結果が出なくなっていったまさに「太く短く」の選手である。2014年はエース・金子を中心に、ディクソン・西・松葉・東明、最強リリーフ陣に比嘉・馬原・佐藤・岸田、守護神に平野と最強投手布陣が形成されていた。ベストナインに選出されたのは、野手では伊藤と糸井のみである事を考えると、2014年は上位まで浮上できたのは投手力と怪我人の少なさの影響が大きい。
特筆すべきなのは、上記のベストナインほとんどが2014年である点である。2015〜2018年のタイトル受賞者が糸井の盗塁王のみである。

2015〜2018年

年度 順位 監督
2015 5 森脇→福良
2016 6 福良 淳一
2017 4 福良 淳一
2018 4 福良 淳一

2015年以降は投手の酷使による影響で、チームは再び低迷していく。2014年では話題になったオリ姫(=オリックスファンの女性)も2016年頃にはいつの間にかいなくなっていた。中島・小谷野・ブランコなどの大型補強を敢行したが、ことごとく失敗に終わる。小谷野や中島はベテランとして気を吐いていたが、全盛期よりはやはり年齢には勝てない。金子や佐藤
の不調や怪我により、チームのエースは次第に金子から無冠のエース・西へ受け継がれていく。2015年と2016年は投手陣の崩壊と野手陣の不振もあって、開幕から最下位を独走し、スタメンに若手は少なく、特に希望も見出せない低迷時代に入る事になる。暗黒の底であった2016年には交流戦・開幕戦・二軍・一軍の全てで最下位を記録するというプロ野球史上唯一の珍事を起こしてしまう。2017〜2018年でも投手陣の層の薄さから、投手の酷使が目立ち、育成しては、怪我で離脱する選手が増加してしまう。そんな中、チームにも若手の風が吹いてくる。2015年・2016年に獲得した選手がどうやら「凄い」というタレコミだった。

選手の離脱と若手の台頭(2019〜2021年)

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京セラドーム大阪

2015年に坂口(ヤクルト)、2016年に糸井(阪神)、2017年に平野(メジャー)、2018年は伊藤(DeNA)と2014年を支えた選手たちが次々とチームを離脱していき、2018年オフにはWエースの金子(日ハム)・西(阪神)がチームを離れ、完全に2014年頃とは別のチームとなった。2019年・2020年の解説者による予想順位は最下位で、案の定2年連続の最下位である。かと言って選手がいない訳ではない。ここ2年のタイトル受賞者を見てみよう。

タイトル受賞者+ベストナイン(2019・2020年)

吉田・山本・山岡の3名は2015年・2016年に獲得した選手であり、プロ1年〜2年でチームのレギュラーに顔を並べ、3年目には何らかの表彰を受けており、侍JAPANとして対外試合でもプレーをした。2018年は山岡、2019年は山本、2020年は田嶋・山本・山崎への援護が少なく、投手にとっては「抑えても、味方が打てないから勝てない」状態が続いている。打線も吉田正尚一人に頼りっきりになっている。そう。ここ2年のオリックスにはトップクラスの選手はいるものの、チームを支える層が薄いのである。上述の中堅選手がこぞってチームを離脱したため、現状でもT-岡田や安達がチームを引っ張る状態が続く。優勝チームとは若手層だけでなく、チームの中堅・ベテランが若手を支えていることは1995〜1996の連覇を見ていると想像がつく。2021年のオリックスでは野手は外国人に頼らざる得ない状況で、中堅・ベテランの層がやはり薄いと感じる。

年度 順位 監督
2019 6 西村 徳文
2020 6 西村→中嶋
2021 中嶋 聡

2021年は中嶋監督であるが、若手育成には二軍監督時代から定評があり、おそらく若手をまずはリリーフとして育成(漆原・斎藤・榊原など)、先発にディクソンや増井などのベテラン勢をに任せる方針であると予想している。野手では吉田正尚を軸に、ロメロ(追記:1/9入団決定)・ジョーンズしか安定した成績を期待できない。その為、若手・中堅の奮起を期待するしかない現状である。

フロントには長期的に選手を流出させないチーム作りをしてほしい。金子や中島の例でも、オリックス球団は「年俸爆上げ→成績低迷→年俸爆下げ」のケースが多い。金融・リース系企業だから、税金関連の調整はしているのだろうが、選手やチームの士気に繋がるケースもある。また監督の単年契約としてしまっては、監督も長期的な戦略を立てることが難しく、チーム方針ブレブレで選手も困惑、目先の勝利を優先した挙句、ドラフトでも高卒を避けてきた(→スケールの大きい選手を獲得できない)事態となってしまった。ここでフロント側の監督起用の我慢が必要であると声を大にして言いたい。「阪急」出身で、「オリックス」で黄金期を築いた扇の要である中嶋監督なら、3年は我慢できるファンも多いのではないか。

来年のオリックスのさらなる飛躍に期待したい。